介護タクシーの「ぶら下がり許可」

いわゆる介護タクシーは、人を運ぶという面ではあくまでも国土交通大臣許可の旅客運送事業ですが、訪問介護事業所等の指定を受けた事業者が、介護・福祉サービスと関連して運送サービスを行っているケースも多くあります。

訪問介護事業所等の指定事業者が、介護タクシーの許可も受けている場合、契約するヘルパーさん等の自家用車で有償運送ができる、というのが介護タクシーのぶら下がり許可といわれるものです。このページでは、ぶら下がり許可で有償運送を行うために必要なことがら等について、解説していきます。

そもそも「運送事業」とは

運送事業の対象は大きくは旅客と貨物に分かれます(自動車運送の場合)が、旅客は路線バスの「乗合旅客自動車運送」、観光バスの「貸切旅客自動車運送」、タクシーの「乗用旅客自動車運送」の3種類があります。トラックの貨物の場合は貨物自動車運送事業ですね。

以上の有償運送を行うには、国土交通大臣の許可を受け、クルマには緑ナンバーを付けてなければなりません(軽自動車、二輪車を除く)。有償運送とは、運賃を受けて人や物を運ぶ事業のことです。

介護タクシーの位置づけ

介護タクシーは、「福祉輸送限定」として、対象旅客等を限定するなどして許可される旅客自動車運送事業(=タクシー事業)の一形態です。乗せられるお客さんなどは限定されますが、反面では最低車両数等や営業区域などは一般的なタクシーより緩和された基準で許可を受けられます。

介護タクシーのぶら下がり許可

訪問介護事業所等の指定を受けた介護タクシー許可事業者等が、訪問介護員等との契約に基づいて行う運送は、一定の要件に該当する場合にはその訪問介護員等が使用者である自家用車(白ナンバー車)で、運賃を受けて旅客を運送することができる、というのが介護タクシーのぶら下がり許可です(関東運輸局での表記は「訪問介護事業所等の訪問介護員等による自家用自動車の有償運送の許可」とされています)。

タクシー事業の許可が道路運送法4条・43条に定められていることから、4条・43条ぶら下がり許可といわれ、また自家用自動車有償運送について登録・許可について道路運送法78条に定められていることから、78条許可という場合もあります。

それでは、上記のような運送サービスを行うために必要な要件等について、詳しく見ていきましょう。

なお、以下、このページでは用語は次のように記します。

  • 訪問介護事業所等 = 訪問介護事業所、居宅介護事業所
  • 訪問介護員等 = 訪問介護員、居宅介護従業者、介護福祉士
  • 自家用自動車有償運送 = 訪問介護事業所等の訪問介護員等による自家用自動車の有償運送
  • ケアプラン等の内容 = 介護支援専門員(ケアマネージャー)が作成する介護サービス計画(ケアプラン)または市町村が行う介護給付等の支給決定の内容
  • 運送事業者 = 訪問介護等の指定を受けた一般(特定)乗用旅客自動車運送事業者

ぶら下がり許可の許可基準

許可基準の概要

  1. 運送の形態
    ケアプラン等の内容に基づき、有資格者の訪問介護員等が訪問介護サービス等と連続または一体として行う要介護者等の輸送。
  2. 運送事業者
    訪問介護事業所等の指定を受けた運送事業者が、その責任において適切な運行管理の下で行うこと。
  3. 訪問介護員等
    訪問介護員等が2種免許を保有するか、または1種免許を保有した上で国交大臣指定の講習を修了していること(終了予定を含む)。いずれも2年間無事故等の条件あり。
    (講習実施機関=大臣認定講習実施機関一覧 :国交省サイト情報にリンク)
  4. 使用車両
    使用車両は、定員11人未満の自動車で、リフト、スロープ、寝台等の設備を設けた福祉車両および乗用自動車で、訪問介護員等が使用権原を有するもの(通常、車検証使用者名義がその訪問介護員)。
  5. 損害賠償措置
    対人8000万円、対物200万円以上の任意保険に加入すること。

上記の介護タクシーにぶら下がり許可による自家用自動車有償運送の許可基準の各項目について、以下にくわしく確認していきましょう。

運送の形態

送迎車の前に車いすのお年寄りと介護員

ぶら下がり許可の対象となる運送は、ケアプラン等の内容に基づき、訪問介護員等が訪問介護サービス等と連続してまたは一体として行う要介護者等の輸送で、訪問介護における通院等乗降介助、障害福祉サービスにおける通院等乗降介助がこれにあたります。

また、運送の発地または着地のいずれかが、訪問介護事業所等の指定を受けた運送事業者の営業区域内にある運送であることが必要です。

運送事業者

運送事業者はその責任において、ぶら下がり許可の運送の許可を受けた自動車(以下、契約自動車)について、以下の輸送の安全確保に係る措置を適切に行わなければなりません。

  • 運行管理を行う体制が整備されていること
  • 運行管理の指揮命令系統が明確であること
  • 運行管理者の選任が適切であること(営業所ごとに、事業用自動車+契約自動車の合計数が39両まで1名、以降40両ごとに1名追加)
  • 事故防止についての教育・指導体制が整備されていること
  • 事故時の処理、連絡体制および責任体制が整備されていること
  • 車両についての整備管理体制が整備されていること
  • 苦情の処理体制が整備されていること

以上は運送事業者が運送事業許可を受ける際に必要な事項ですから、ぶら下がり許可で有償運送を行う契約自動車も、その運行管理体制に準じて管理、運営を行っていくことになります。

上記の他、ぶら下がり許可の取消しを受けた訪問介護員を使用していた事業者は、その取消し時から2年間経過していなければいけません。

訪問介護員

運転者となる訪問介護員等は、以下であることが必要です。

  1. 運転免許に関する事項
    ・第2種運転免許を保有し、申請前2年間に無事故かつ免停処分を受けていないこと
    ・第1種運転免許の場合は、申請前2年間に無事故かつ免停処分を受けていないことに加え、国交大臣認定の講習を修了するか、終了する具体的な計画があること
  2. 欠格事由に該当しないこと
    旅客運送事業の許可受けるに、道路運送法第7条に規定する欠格事由に該当しないことが必要ですが、ぶら下がり許可の訪問介護員等についても、同じ要件(欠格事由非該当)が求められます。
  3. ぶら下がり許可について、許可取消しを受けたことがある場合、その取消し日から2年を経過していること
介護員の女性と車いすの要介護者

使用車両

ぶら下がり許可の有償運送に使用できる自動車は、乗車定員11人未満のもので、福祉車両(車いす/ストレッチャーのためのリフト・スロープや寝台等の特殊な設備を設けたもの)や乗用車(軽自動車含む)となっています。

また、補問介護員等が使用権原を有する自動車、つまり車検証の「使用者」が訪問介護員等の名義である必要があります。

賠償能力

上記の使用車両について、対人8000万円、対物200万円以上の任意保険(搭乗者傷害を対象に含むものに限る)に加入すること、または加入する計画が必要です。

許可の期限

ぶら下がり許可の期限は原則として2年間となっています。

許可に付する条件

ぶら下がり許可には、以下の条件が付されます(一部略)。

  1. 契約している運送事業者の営業所において運送の引受を行うこと
  2. 契約自家用自動車内に運賃、料金を掲示すること
  3. 使用車両に、以下の事項と方法により有償運送に用いる車両であることを表示すること
    ・(表示事項)訪問介護事業所等の氏名、名称または記号
    ・(表示事項)「有償運送車両」または「78条許可車両」の文字
    ・(表示方法)上記を、ステッカー、マグネットシートまたはペンキ等による横書きとし、縦横50mm以上の文字で、車両の左右両側面に外部から見やすいように表示すること
  4. 本許可に基づく有償運送を行う際には、国交省通達(国自旅第171号)に定める乗務員証を携行すること

また、許可条件とは別ですが、ぶら下がり許可による運送を行う場合、次のことを旅客に告知しなければなりません。

  • 運送事業者と旅客との運送契約であり、責任は運送事業者が負うこと
  • 自家用自動車による有償運送であること

許可申請について

ぶら下がり許可の申請者は、許可を受けて運送を行う訪問介護員等ですが、上記のように運送契約は運送事業者と旅客の契約であり、運送責任は運送事業者が負うという建付けのため、許可申請書は運送事業者が取りまとめて「申請代理人」として申請するという形式になっています(関東運輸局)。

まとめ

介護タクシーも法律上は一般的なタクシーと区別がなく、国土交通省の通達や公示文書で運用が行われている制度です。「ぶら下がり許可」といわれる「訪問介護事業所等の訪問介護員等による自家用自動車有償運送」もまた同様です。

法定された制度でないところから、逆にわかりにくい部分もありますが、概要は上記でご理解いただけると思います。

当事務所では、介護タクシー許可をはじめ、貨物自動車運送事業(トラック)の許可、事業計画変更認可等の申請に特化して事業者の皆様のビジネスをサポートしております。これらの許認可申請をご検討されている皆様は、ぜひお気軽に下記までご連絡ください。

当事務所で介護タクシー許可をサポートしたお客様の声はコチラ

お問合せブロック

〒338-0002
埼玉県さいたま市中央区下落合2-19-14
コーラルトート101