運送業の許可をとるには、営業所、睡眠・休憩施設、車庫の3種類の不動産が必要です。自己所有物件はもちろん賃借物件でも構いませんが、これらは農地法・都市計画法・建築基準法等の「関係法令に抵触しないもの」であることが必要とされています。
関係法令に抵触する土地・建物では、運送業の新規許可、営業所や車庫などの移転、増設の認可が取れませんので、場所を決定する前によく確認しておくことが極めて重要です。
3つの「関係法令」とは?
運送業許可の公示基準で、営業所・睡眠・休憩施設、車庫(以下、運送業の施設と記します)に関して「関係法令」として挙げられているのが、主に農地法・都市計画法、建築基準法の3つです。
運送業の施設の要件として、これらの法律が何を規制しているかということを簡単に表すと以下のようになります。
「関係法令(主要3法令)が規制している事 |
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不動産は物件により状況が千差万別、法令も自治体によって解釈・運用が異なる場合があります。実際の申請等では個々の物件について、役所に良く確認、相談することが重要ですので、そのための基礎地知識としてお読みください。
農地法と運送業の施設
結論からいえば、運送業の営業所、睡眠・休憩施設、車庫(以下、運送業の施設と記します)は、原則として農地には設けることができません。農地法が農地の保全を大きな目的の一つとしているからです。
農地を農地以外の土地に変えるには、農地法に基づく「農地転用」いわゆる”農転手続き”を行わなければなりませんが、農業振興等の観点から必ず転用ができるとは限らず、また手続きも半年、一年と期間を要する場合もありますので、ハードルはなかなか高いです。
都市計画法、建築基準法と運送業の施設
都市計画法と建築基準法を、運送業の施設との関係で関係で考えるときには、次の2つの観点で見ておけばよいでしょう。
- 市街化調整区域には、無蓋車庫(平置きで屋根等のない駐車場)は設けられるが、建築物は原則設置できない
- 市街化区域では、用途地域により運送業の施設の設置ができるできないが分かれる
市街化区域と市街化調整区域
市街化区域では、原則として開発、建築の制限は強くありません。ただし用途地域によって建築物の用途制限がかかりますので、運送業の施設を置けない場所があります。
市街化調整区域とは、市街化を抑制し、農業用地や自然環境の保全を図る地域です。原則建築はできませんので、運送業の施設は設置できませんが、建築物の設置を伴わない無蓋の車庫(平置きで屋根等のない駐車場)は設けることができます。
用途地域と建築物の用途制限
市街化区域の中は13の用途地域に分けられ、その用途地域ごとに、設けることのできる建築物の用途、規模が定められています。
具体的には、「東京都都市整備局HP ”用途地域による建築物の用途制限の概要”」で詳しく確認できます。運送業の営業所については、表の「事務所」の欄で確認してください。
×印が付いているところは事務所が設置できませんが、下記の例外に該当すれば運送業の営業所も設置が可能です(表の上から2番目)。
兼用住宅で、非住宅部分の床面積が、50㎡以下かつ建築物の延べ面積の2分の1未満のもの。
関係法令に抵触しないことを証する手続
運送業許可申請等において、運送業の施設に関する書類としては、「使用権原を証する書類」として、自己所有物件なら登記事項証明書(登記簿謄本)、賃借物件なら賃貸借契約書の写しの添付を求められますが、本稿の「関係法令に抵触しないこと」は、これに抵触しない旨の宣誓書を申請者が申請書に添付して提出するものとされています。従って、建築確認通知書や農地転用届出書等の添付は必要ないこととされています。
「都市計画法に抵触しないこと」についてのみ、申請を受理した運輸支局から関係都道府県等の開発部局に照会が行われます。
まとめ
途中にも書いた通り、不動産の個別性や、自治体による解釈・運用の差などもあり、一概に判断できない部分は個別の申請案件の対象になる物件をふまえて、自治体の窓口、運輸支局等によく確認、相談することが重要になるでしょう。その確認、相談をするにも一定の基礎的な理解は必要ですので、本稿がその一助になれば幸いです。
とはいえ、面倒でややこしい調査や行政窓口での確認、相談は時間もストレスもかかるかと思います。当事務所の行政書士髙橋は、宅地建物取引士資格を有し、大手企業の企業不動産管理や取引の実績も多くありますので、これらをお忙しい事業者の皆様にかわって的確に行います。ぜひ、ご利用をご検討ください。
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