レンタカー型カーシェアリングの許可

いきなりタイトルと異なりますが、実は制度としてレンタカー型カーシェアンリング許可、というものがあるわけではありません。事業の許可としてはレンタカー許可、正式には「自家用自動車有償貸渡し」の許可を受けて行う事業の一形態として行います。

このページでは、レンタカー許可のキホンに加えて、カーシェアリング事業を行うためにレンタカー許可を受ける際に必要になること、書類等についてご案内します。

個人間カーシェアリング

このページの本題は、レンタカー型カーシェアリングを行う場合の許可等に関することですが、その前にこれとは別のカーシェアリング、すなわち個人間カーシェアリングについて、ちょっと見ておきましょう。

個人間カーシェアリングでは、システム提供者(会員制度やサイトなどの運営者)は、オーナーと利用者がクルマの「共同使用契約」を結ぶ前提でそのマッチングをする、またはその情報提供を行うもので、クルマのオーナー(個人)と利用者は、一定期間クルマの「共同使用契約」を結ぶ、という建付けになっています。

このように、システム提供者はクルマの貸し借りを行うわけではなく、オーナーと利用者は、有償の貸し借りではなく共同使用である、という形式でレンタカー許可の規制外となるというものです。実態がその通りかについて、私は疑問なしと言えないと考えていますが、ここでは本題でないので、関連ページへのリンク(下記)を提示しておくにとどめます。

レンタカー型カーシェアリング

さて、本題以外が長くなってしまいましたが、レンタカー型カーシェアリングについて確認していきましょう。

レンタカー型カーシェアリングは、自家用自動車有償貸渡し=レンタカー事業の一形態です。

現行のレンタカー許可基準(公示)には、レンタカー型カーシェアリングについて「会員制により特定の借受人に対して、自家用自動車を業として貸渡すことをいう」と定義されていましたが、現行の公示にはこの文言がなくなっています。ただし、レンタカー型カーシェアリングを行う場場合には、許可申請には会員規約または契約書が必要とされていますので、考え方は大きくは変っていないと思います。

一般的なレンタカーが、通常有人の営業所で貸渡す方式であるのに対し、カーシェアリングの場合は、道路わきの無人の駐車場に停めてあるクルマを、会員カードやスマホで開錠して利用する形態をとることが多いです。
この場合、事前に会員登録した上で、磁気カードを交付したりアプリへ登録したりすることにより無人でクルマの開錠ができる必要があります。

また、多くのカーシェアリングは、通常無人の車庫(ステーション)で貸渡し、返却を行うので、車両の貸渡しや整備など車両の状況の把握、車両・エンジンキーの管理、貸出しについて、何らかの形でIT等を活用して行うことになります。

このように、レンタカー型カーシェアリングを行うのに必要な許認可はレンタカー許可(=自家用自動車有償貸渡し許可)であり、許可申請に際しては、無人で貸渡や車両管理が可能であることを示す書類を、一般的ななレンタカー許可申請の必要書類にプラスして申請することが必要になります。

<参考>一般的なレンタカー許可については・・・

許可申請で追加が必要になる書類

基本的な書類は、一般的なレンタカー許可と共通ですが、カーシェアリングを行う場合は、以下の書類を追加で添付ファイルとして提出しなければなりません。

  • 貸渡す自動車の車名、型式
  • 上記自動車の保管場所(デポジット)の所在地、配置図
  • 上記の保管場所を管理する事務所の所在地
  • IT活用等による車両貸渡状況、整備状況の把握方法
  • 車両、エンジンキー等の管理・貸出し方法
  • 会員規約または契約書
  • ワンウェイ(乗り捨て)方式を行う場合、確約書(保管場所確保に関することなどを確約)

ITシステムに関する添付書類は…

無人の車庫等でクルマを貸渡す場合は、何らかの方法でITシステム等を活用するかと思いますので、上のリスト④⑤が必要になります。この場合、申請の添付書類として、ITシステムについての詳細な仕様等までは求められません。会員が特定できる予約情報と突合してどのようにドアロックを解除し、どうエンジンスタートを行うかなど、借受け時と返却時の流れがシステム外要図のような形でわかるものを添付すれば大丈夫です。

会員規約

また、”会員規約または契約書”も申請書の添付書類として必要です。多くの場合、会員規約を定めることになるかと思います。

会員規約は、会員制でサービスを提供する場合の一般的な規約の内容に加え、自動車を貸渡すという事業の性格上、運転免許の確認に関すること、借受る人と運転する人の責任に関すること、などを定めておく必要があります。

また、会員規約は貸渡約款の中に含めて作成しても構いません。ただし、貸渡約款は内容変更した場合に運輸支局に届出る義務が生じますので、会員規約と貸渡約款は別に作っておけば、会員制度に関することのみを変更した場合には届出を行わなくて済みます。

当事務所では、IT活用による貸渡方法の概要が決まり、会員制度の基本設計ができていれば、会員規約の作成も含めて許可申請のご相談に応ずることが可能です。

自動車の使用の本拠の位置、保管場所について

一般的なレンタカーの場合

自動車を”使用者”として使用する場合、「使用の本拠の位置」から2km以内の場所に「保管場所(車庫)」を確保しなければいけません。

使用の本拠の位置とは、普通、個人の場合なら住所、会社の場合は会社 所在地となりますので、自宅や会社から2km以内に車庫が必要ということになりますね。

一般的なレンタカーの場合、「事務所」というのはいわゆる営業所、クルマを貸渡す手続きや料金の収受を行い、出発と返却の拠点となる場所のことになります。そして、この事務所が所属する車両の車検証上の「使用の本拠の位置」となります。

従って、レンタカーも事務所(営業所)から2km以内に車庫を確保して「車庫証明(正式には自動車保管場証明書)をとらないと登録ができないことは一般的な自家用車と同様です。

カーシェアリングの場合

それでは、レンタカー型カーシェアリング(ワンウェイ)の場合はどうでしょうか?

カーシェアリングは、使いたい場所の近くにステーションがあって、有人の店舗が営業していないような時間でも借りられる(返せる)、というのがその利便性の大きな特徴ですね。なので、有人の営業所を多数設置しなくとも、車庫を確保すればサービスが提供できる、という点に意義があります(もちろん、キーの貸出しや車両管理がIT活用等でできることが前提です)。

そのため、レンタカー型カーシェアリング(ワンウェイ)においては、有人の事務所等から2km以内に車庫が必要、というシバリが外されています。

現実には、国交省通達により…

  • 無人の道路外駐車場で貸渡・返還が行われているか否かにかかわらず貸渡自動車の「配置事務所」とすることができる。
  • ワンウェイ方式カーシェアリングの場合、配置事務所を自動車の「使用の本拠の位置」とすることができる

…とされており、

警察の車庫証明申請の審査においては、国交省との協議基づいて以下の書類を添付することで車庫証明の申請をすることができます。

  • レンタカー型カーシェアリング(ワンウェイ)についての、運輸支局長への申請書類、添付書類の写し
  • レンタカー事業許可書の写し
  • その他「使用の本拠の位置」として疎明する書面がある場合、その書面の写し

その結果、レンタカー型カーシェアリング(ワンウェイ)の場合、「車庫=事務所=使用の本拠の位置」と取扱われれることになりますが、これは、ITシステム活用等により、車両・キーの貸し出し、車両の貸渡し・整備状況の管理が的確に行えること、が前提となっています。

まとめ

以上のように、レンタカー型カーシェアリングを行うためには、一般的なレンタカー許可申請に付加してシステムを作り、それを書面として添付するといった負荷が付加されますが、一方で、そこがクリアできれば、車庫が確保できれば有人事務所を増やしていかなくてもサービス提供の場所、エリアが拡大していける、という事業者側のメリットがあります。

また、利用者にとっても、「所有から使用へ」というシェアリングエコノミーの流れで自動車を保有する経済的負担と手間をかけることなく、必要な時にクルマを利用できる、というメリットを享受できるシステムであるといえます。

当事務所では、レンタカー型カーシェアリング(ワンウェイ)の許可申請を含め、レンタカー許可申請について豊富な実績があります。一般的なレンタカー許可を含め、お困りのことがありましたら、ぜひ一度ご相談下さい。

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