介護タクシーの許可要件

介護タクシー開業の基礎知識 にも書いた通り、介護タクシーは一般のタクシーのうちの特別な一形態とされているので、介護タクシー特有の許可要件があればそれが適用されますが、それ以外は一般のタクシーの許可要件に基づいて審査されることになります。

くわしくは本文で順に説明していきますが、概要をまとめると以下のようになります。

項目許可要件の概要
営業区域都道府県単位
営業所3年以上の使用権原があり、営業区域内で農地法・都市計画法等に抵触しないもの
事業用自動車1両でもOK。使用権原のあること(リースの場合1年以上の契約)
車庫原則営業所から2km以内。車両数に応じた広さが必要。
3年以上の使用権原があること。農地法・都市計画法等に抵触しないもの
休憩・睡眠施設営業所に併設、または2km以内。農地法・都市計画法等に抵触しないもの
管理・運営体制法人は専従役員を置く。運行管理担当役員を定める。
車両5台以上で運行管理者・整備管理者の選任が必要
運転者車両数に応じた2種免許の保持者を確保。試用期間中の者は不可など、一定条件あり
資金計画車両1年分の費用(リースの場合等)、土地・建物1年分(賃借の場合)、税・保険費用1年分
人件費・燃料費・修繕費等2か月分‥‥など、基準に従い積算=所要資金。
所要資金総額の1/2以上、事業開始必要額の全額の残高証明提示など(詳細は本文参照)
法令遵守役員の欠格要件非該当、運送関係法令等での処分歴から一定期間経過

以上、介護タクシーの許可を得るための要件を大まかに表に示しましたが、それぞれについて、もう少し細かく確認していきましょう(欠格要件の詳細部分など、一部は省略してあります)

1.営業区域

営業区域は原則として都道府県単位です。その区域内に下記2の要件を満たす営業所を設置しなければなりません。

都道府県の境界に接する市区町村に営業所を置く場合、隣接都道府県の隣接する市区町村を含む区域を営業区域とすることができる場合があります。

2.営業所

営業所とは、事業用自動車の運行管理、利用者への営業上の対応を行う事務所のことで、以下の事項に適合することが必要です。

  1. 営業区域内にあり、土地・建物について3年以上の使用権原を有していることが必要です(賃貸の場合、契約期間が3年以上または自動更新条項が付いている、など)。
  2. 農地法、都市計画法、建築基準法等の関係法令に抵触しないものであること
     例えば、農地に建物は建築できませんし、用途地域が住居専用地域では事務所は設けられません。

「関係法令に抵触しないこと」はこちらも参考にしてください :運送業 事業法不動産の条件とは

3.事業用自動車

申請者が使用権原を有することとされ、所有している場合は問題ありませんが、リースの場合は概ね1年以上の契約期間が必要です。また、車両に営業区域等の表示をすることが求められます。

使用する自動車は、必ずしも特別な装備(昇降シートやリフト、スロープなど)を付けた福祉自動車でなく、通常のセダン等でも大丈夫です。ただし、通常のセダン等でこの事業を行う場合は、一定の資格者が乗務しなければなりません。

くわしくは下記リンクから
 福祉自動車   セダン型等を使う場合
 

4.最低車両数

申請者が使用権原を有することとされます。自社所有車両ならもちろん問題ありませんが、リースの場合1年以上の契約期間が必要です。

必要台数としては1台から事業を行うことが可能です(一般の法人タクシーの場合、区域により5台以上、10台以上などとなっていますが、介護タクシーは1両で許可取得可能です)。

4両以下であれば、運行管理者、整備管理者の選任も不要です。

運行管理者、整備管理者制度についての詳細はこちら

  運行管理者とは?

  整備管理者とは?

5.自動車車庫

  1. 原則として営業所に併設するものであること。併設できない場合は営業所から直線で2㎞以内の営業区域内でなければなりません。
  2. 車両と車庫の境界、車両と車両の間隔をそれぞれ50cm確保して、使用する自動車すべてが収容できる広さが必要で、車庫以外の用途の部分と明確に区分されていることも必要です。
  3. 申請者が土地、建物について3年以上の使用権原を有すること
  4. 関係法令に抵触しないものであること(営業所の要件2と同様)
  5. 自動車の点検、清掃、調整ができるな広さで、必要な器具等が設置も必要です。
  6. 事業用自動車の出入りに支障がなく、前面道路との関係において車両制限令に抵触しないものであること。
    →車両制限令では「公道を車両が通行しうる基準」を定めているので、車庫に収容する自動車の車幅に照らして、前面道路が所定以上の幅員でなければなりません。この点は道路幅員証明を取って申請書に添付します。

6.休憩、仮眠または睡眠のための施設

原則として営業所または自動車車庫に併設するものであることとされますが、併設できないときは営業所および自動車車庫の両方から2㎞以内の場所に設置します。

3年以上の使用権原があること、農地法ほかの関係法令に抵触しないこと、適切な規模・設備、他の用途と明確に区分されていること…については、自動車車庫と同様です。

7.管理運営体制

  1. 法人の場合は、役員のうち1名がこの事業に専従することが必要です。また、運行管理を担当する役員を決め、指揮命令系統を明確にしておくことも必要です。
  2. 営業所ごとに5両以上の車両を配置するときは、常勤・有資格の運行管理者を必要人数置かなければなりません。整備管理者も同様です。
  3. 車庫が営業所に併設できない場合は、営業所と車庫が常時密接に連絡でき、点呼等が確実に実施される体制としなければなりません。
  4. 事故防止のための教育および指導体制を整え、事故の処理および自動車次項報告規則に基づく報告等の責任体制など、緊急時の連絡体制、協力体制が明確に整備しておかなければなりません。
  5. 利用者等からの苦情の処理に関して、苦情処理責任者と苦情処理担当者を定めます。

8.運転者

使用する事業用自動車の数に応じた2種免許を持っている運転者を常時選任する計画があることが必要です。許可申請時においては雇用・確保済みでなくても構いません。運転者は次の4項目に該当しない人でなければなりません。

  1. 日々雇い入れられる者
  2. 2ケ月以内の期間を定めて使用される者
  3. 試みの使用期間中の者(14日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)
  4. 14日未満の期間ごとに賃金の支払い(仮払い、前貸しその他の方法による金銭の授受であって実質的に賃金の支払いと認められる行為を含む。)を受ける者

9.資金計画

必要な資金として、「所要資金」と「事業開始当初に要する資金」を、定められた費目ごとの基準に従い計上して見積り、所要資金の50%以上、かつ、事業当初に要する資金の100%以上」の自己資金を、”常時確保”しておかなければなりません。

「所要資金」・「事業当初に要する資金」の算出基準

自己資金の確保方法

  • 自己資金は、預貯金と預貯金以外の流動資産とします。預貯金は残高証明書、流動資産は申請日時点での見込貸借対照表による金額とします。
  • 必要な金額は上に書いた通り、「所要資金の50%以上、かつ、事業当初に要する資金の100%以上」ですから、上表の「合計額Aの1/2」または「合計額B」のいずれか大きい方の金額となります。
  • 「常時確保」とは、申請日時点および許可処分が出るまでの間の適宜の時点の2回、上記書類で確認することとなっています(見込貸借対象表は許可申請時点のみ)。

10.法令遵守

法令遵守の基準として、役員の法令知識、社会保険の加入、欠格要件に該当しないこと、関係法令による処分歴等について定められています。

役員の法令知識

個人の場合申請者本人、法人の場合介護タクシー事業の担当役員がタクシー事業を行うのに必要な法令の知識を有することが必要、とされています。但し、他の一般の法人タクシーや乗合バス、貸切バス、貨物自動車運送などはすべて役員の法令試験の合格が義務付けられていますが、関東運輸局管内の介護タクシーに限っては、法令試験の受験・合格は必要ありません(2024年3月 関東運輸局確認)

社会保険に加入すること

健康保険法、厚生年金法、労働者災害補償保険法、雇用保険法に基づいて加入義務がある社会保険にはすべて加入しなければなりません。

欠格事由に該当しないこと

 申請者と法人の場合は役員全員が、道路運送法第7条に該当しないことが必要です。

 条文からは内容が読み取りにくいと思いますが、ざっくり言えば

  1. 1年以上の懲役、禁固の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない
  2. 旅客自動車運送事業の許可取消しを受けてから5年を経過していない
  3. 親会社や実質支配会社などが2に該当する
  4. 旅客自動車運送事業の許可の取消しの処分逃れを行って5年を経過していない
    (取消し処分決定の前に廃業届けをした場合など)
  5. 申請者(法人)の役員が以上に該当する
  6. 申請者が未成年者、成年被後見人の場合、法定代理人が以上に該当する

といった事項に該当する場合、許可が受けられないということになります。

関連法令による処分歴

旅客自動車運送事業に関して定める道路運送法、貨物自動車運送事業法や、その他タクシー事業に関して定める法律など規定に違反して輸送施設の処分を受けた場合、その処分の軽重と処分後の期間により、タクシー事業のの許可を受けられないことなどが、法人タクシーの「審査基準」に定められています。

その内容は、「10.法令遵守」の通りですが、読んでもなかなかわかりにくいかと思います。
こちらもざっくりといえば、

  • 旅客/貨物自動車運送事業、タクシー、運転代行関連の法令違反で車両等の使用停止処分を受けた場合、その処分の重さに応じた一定の期間が経過していない者でない
  • 上記同様の法令で改善命令を受けた場合は、その命令による改善が実行されている
  • 旅客/貨物自動車運送に関する法令に基づく報告を適切に実施していること
  • 申請前1年以内に、自らに責任ある重大交通事故の発生や、酒酔い運転等の重大な交通違反がないこと 

などが求められる、という内容です。

まとめ

以上、欠格事由や法令遵守基準の詳細は省略して、許可を取るために満たすべき要件を解説しました。
要件は多岐にわたりますが、要件を満たせば基本的に許可は下りますので、事前にしっかり確認しておきましょう。判断に迷う点がありましたら、下のお問合せ先へお気軽にご連絡ください。初回相談は無料で承っております。

また、介護タクシーは許可取得後すぐに事業開始できる、というものではありません。許可後、運輸開始までにいろいろやるべきことがあります。許可取得をご検討されている方は、許可後のこともあらかじめ確認しておくと事業のスタートがスムーズです。許可後の対応事項は下記リンクからどうぞ。

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