自動車手続のOSS

乗用車の変更登録のご依頼をいただき、OSS申請で行った申請の書類の提出のため、練馬の自動車検査登録事務所(いわゆる車検場)に行ってきました。

OSSとは、One Stop Service 略で、「自動車保有関係手続のワンストップサービス」として国交省によって行われているものです

自動車保有関係手続のワンストップサービスの概要

自動車を保有するためには多くの手続(検査登録、保管場所証明申請等)と税・手数料の納付(検査登録手数料、保管場所証明申請手数料、保管場所標章交付手数料、自動車税種別割、自動車税環境性能割、自動車重量税等)が必要となります。

これらの手続と税・手数料の納付をインターネット上で、一括して行うことを可能としたのが、「自動車保有関係手続のワンストップサービス(以下、OSS)」です。
OSSを利用することによって、現在紙によって行われている申請等の手続を、インターネット上で行うことが可能になります。

(以上、出展 国交省「自動車保有関係手続のワンストップサービス」https://www.oss.mlit.go.jp/portal/ より)

OSS申請にはASP型のソフト経由でおこなうものと、ブラウザ完結でおこなうもの(ポータルサイト申請)がありますが、今回私はポータルサイトから申請を行いました。以下はその体験レポートです。

電子申請ではないの?

冒頭に書類を提出に行ってきました、と書きました。ここで疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。上の説明にも「申請等の手続きをインターネット上で行うことが可能」とあります。これって、電子申請、いわゆるオンライン申請でしょ、それなら、書類を提出しに車検場に行くことはないのではないの?と思ったアナタ、当然の感想ですよね。

ところが・・・です、「申請」という行為そのものは確かにネット上で行えるのですが、委任状や住民票など(手続きの種類によって違いがあります)は、紙の状態で「運輸支局または自動車検査登録事務所(以下、運輸支局等)」に提出しないといけないんです。新しい車検証やナンバープレート(ナンバーが変る場合)も、窓口に行って交付を受ける必要があります。

車検証やナンバープレートは大事なものなので、交付時は窓口で行うことが必要、というのはわからないでもないですが、委任状や住民票を受付時点で紙で役所の窓口に提出しないといけない手続きを、(ネットでの)ワンストップサービスというのってどうなんでしょう。せめて書類の提出は郵送で受け付けてくれればよいですが、窓口提出しないといけないとの事。

まぁ、なんちゃってオンライン申請、ですよね?

練馬車検場窓口

なぜOSS申請を選択したのか?

今回ご依頼いただいた業務は、使用者が変る変更登録で、保管場所もナンバーも変わる手続きになります。順序から言えば、自動車保管場所証明(いわゆる車庫証明)を取り、その後運輸支局等で車検証とナンバープレートの交付を受けるという順序になります。

ではこれを、通常の窓口で行った場合とOSSでなんちゃってオンラインで行った場合の流れを見てみましょう。

窓口申請の場合

窓口で紙の申請書等で申請する大まかな流れは以下の通りです。

  1. 車庫の場所を管轄する警察署に出向き、自動車保管場所証明の申請を行う
  2. 3日~1週間後くらいに、再度警察署に出向き、自動車保管場所証明書の交付を受ける
  3. 自動車保管場所証明書と車検証その他必要書類を持って、自動車検査登録事務所に出向き、申請書を記入・提出し、車検証等の交付を受ける

以上で、警察署に2回、運輸支局等に1回出向く必要があります。

ひょっとすると警察署は24時間・365日営業…と思っている方はいませんか?車庫証明手続きのようなものは警察内で「行政事務」といわれる業務なので、受付る日時は一般のお役所と同じで、平日の日中のみの取扱いです。
ですので、たとえば品川ナンバーの地域から練馬ナンバーの地域に引っ越したような場合、クルマ関係の手続きだけでお勤めを3日も休まなければならない、ということも起こるワケです。

では、自動車保有関係手続のワンストップサービス=OSSを活用するとどうなるでしょうか。ネット時代のメリットが享受できるといいですネ。

OSS申請の場合

OSSで自動車の変更登録をする場合、大まかには以下の流れになります。

  1. ネット上のOSSポータルサイトから必要事項を入力、申請する。受付番号が発行される
    (警察あての保管場所証明、運輸支局等あての自動車登録手続きの両方が一括して入力、申請できる)
  2. 運輸支局等に出向き、住民票、委任状等の紙の書面を窓口で提出する(この段階では警察署窓口手続きは不要)
  3. オンライン上で、保管場所証明の審査等が進む(別途手数料をネットバンキング等で支払)
  4. 警察による保管場所証明の審査が終わると、運輸支局等での審査に移行。不備がなければ審査が終了
  5. 警察署に出向き、自動車保管場所証票(後部ガラスに貼るステッカー)の交付を受ける
  6. 審査が終了したら、再度運輸支局等に出向き、車検証やナンバープレートの交付を受ける

以上のようになります。

直近の状況

上記は、令和3年に執筆しました。その後、下記のようにワンストップ化、電子化の進展があります。

※2022(令和4)年1月4日から、5番の保管場所ステッカーの交付が郵送で受けられるようになりました(申請者本人によるOSS申請に限る)。これにより、ようやく「ワンストップ」は実現しました。

それは良いのですが、例えば移転登録(名義変更)の場合、新旧所有者の電話番号の情報は必要がない(委任状に電話番号欄がある場合もありますが、空欄で可。申請書には電話番号欄なし)のにもかかわらず、OSSの場合電話番号が必須項目になっています。

窓口手続きに際して移転登録の当事者の電話番号が必要ないのに、OSSだと必要になる理由は私にはわかりません。

窓口手続きの場合に不要な情報を、OSSの場合に必須で要求されるということは、手続を行うのに先立って、手続き方法をOSSであると予定した上で必要な書類や情報を特定する必要があることになります。

逆にいうと、従来のスタンダードである窓口手続きでの必要書類・必要情報を前提として準備した場合にOSSが使えないという状況になる可能性が少なからずある、ということで、OSS普及促進に逆行するといえそうです。早期に改善してもらいたいものです。

※さらに、2023(令和5年)1月4日から、車検証が電子化されています。電子化車検証はA6サイズと従来より小さくなり、券面に表示される項目も減りました(例えば、車検の有効期限は車検証券面には記載されません)。これにより、車検証券面記載事項に変更がない手続(例えば自動車の使用者の住所変更など)では、運輸支局等に行かずに「記録事務代行者」の事務所で車検証のICチップの情報書換を行うことで手続きを完了することができます。
ワンストップ化、電子申請化ともかなり進展してきたという感はありますが、例えば所有権移転には譲渡証明書の提出が必要…といったことから、まだまだ運輸支局等への出頭が必要な手続きも多く残っている現状です。

練馬車検場建物

結局比較すると・・・・?

紙の申請書を書くのとパソコン等で入力するのとの違い、その他の違いもあるので一概にどちらが面倒かとも言えませんが、まだ役所に出向かずに手続きが完結するケースというのはかなり限られたものとなっています。

OSS申請には電子証明書が必要になります。マイナンバーカードを使ってe-taxで確定申告している方などは別とすると、初期設定も少々手間がかかります。

以上は保管場所が変わる変更登録のケースで書きました。警察署への手続きが不要のケースなどでは上記と異なることももちろんありますが、OSSで手続するメリットというのは、一般的にはあまり感じられないケースが多いのではないでしょうか?

まとめ

今回私は、行政書士手続きのオンライン化推進の流れにあり日本行政書士会連合会等もOSS対応を奨めていること、今回の案件の場合、私にとって地理的に警察署より自動車検査登録事務所の方が行きやすい位置にあったことなどから、あえてOSS申請で行ってみました。

今日は、OSSシステム上の説明で、”受け付け審査時に必要な書類”とされているものを、「申請書を送信した運輸支局等に、必要な書類等を提出してください。」との指示に従って提出しに行ったのですが、せめてこの受付審査の必要書類を郵送受付可能としてもらえれば、役所窓口へ行く回数は一回減らせると思います(運輸支局等では、郵送可能な手続きは極力郵送で、と要請していますが、前述したように、本件のOSSの受付審査書類は郵送不可との事=OSS問合せ電話の回答)。

コロナ禍によって、オンライン化の推進や印鑑廃止・・・など、行政手続きのデジタル化が強く求められています。今回は自動車登録手続きのうち、一つのパターンについて述べましたが、完全デジタル化にはまだほど遠い状況と言っていいでしょう。

自動車関連の手続きは生活者にとって身近な手続きのひとつと言えます。行政手続きデジタル化は、国民負担の軽減と行政事務の効率化・迅速化等を目指してスピーディに進めてほしいものだと思います。

窓口申請でも、OSS申請でも・・・・自動車登録手続き、車庫証明のご用命は下記までお気軽に。

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