よくわかる!運送業に必要な「モノ」

運送業(一般貨物自動車運送業)の許可を受けるために必要な「モノ」は、「営業所」、「休憩・睡眠施設」、「車庫」、「事業用自動車」です。それぞれに細かい要件がありますので、順に確認していきましょう。(内容は法令、関東運輸局の”公示基準”に基づきます)

営業所の要件

運送業の営業所とは、運行管理や整備管理など、車両や運転者の管理を行う基本となる単位です。営業所は以下の条件を満たすことが必要です。

使用権原があること

自己所有の場合は登記簿謄本(登記事項証明書)賃借物件の場合は、賃貸借契約書等の添付で営業所を使用する権原があることを裏付けます。なお、賃貸借の場合は、契約期間が2年以上か、または契約期間満了時に自動更新条項があって安定的に賃借できることが必要です。

関係法令に抵触しないものであること

農地法・都市計画法・建築基準法により、建物の建築可否や土地の用途が規制されますので、営業所はこれに抵触しないことが必要です。

特に、市街化区域内では、「〇〇住居専用地域」と”住居専用”とついている用途地域内は基本的には事務所設置不可ですので、注意が必要です(例外もあります)。

市街化調整区域は基本的に建物が建築できないため、営業所の用地として不適当です。ただし、すでに建物が建っている場合は、「既存不適格」の建物などでは合法的に営業所として使用できる場合もあります。このような場合は、市区町村等で確実な確認を行ってください。

都市計画に抵触しないことの確認は、申請を受理した運輸支局から関係自治体に照会(都計法上の照会)が行われます。それ以外は、法令に抵触しないものである旨の宣誓書を提出します。

▼営業所の要件についてくわしくは・・・

規模が適切であること

面積等の基準はなく、「規模が適切であること」「必要な備品を備えているなど、事業遂行上適切なものであること」とされています。

従業員数や車両数に応じた管理業務、執務が可能で、事務机、イス、書庫、電話、FAX、PC、プリンタなどが設置できるものであれば問題ないでしょう。広さ、面積の基準はありません。

申請時に写真の添付で確認することとされています(特段の事情があれば、写真は事後提出も可)。

車庫の要件

車庫に並ぶトラック

車庫の場所

車庫は原則として営業所に併設が必要です。併設できないときは運輸省告示に基づいた営業所からの距離の範囲内(例:埼玉県では営業所から10㎞以内、東京特別区・神奈川県横浜市・川崎市では20㎞以内)でなければなりません。

10km以内であればOKとはいえ、点呼実施のことを考えると営業所に併設できない場合でも、短時間で行き来が容易な程度の距離が望ましいでしょう。

収容能力

車両と車庫境界、車両と車両の間隔を50cm以上確保して、計画するすべての車両を収容できることが必要です。また「他の用途に使用される部分と明確に区画されていること」とされており、写真の提出が必要です。従って、車庫の隣に資材庫などを設ける場合、どこからどこまでが車庫であるかが外見的にわかり、そこに必要台数が収納可能であると明らかにできることが望ましいでしょう。

50㎝間隔をとった車庫の収容能力
車庫の収容能力 

関係法令に抵触しないこと

車庫も、関係法令(農地法、都市計画法等)に抵触しないことが必要です。農地は車庫にできません。屋根付きなど建築物を伴う車庫を設ける場合には都市計画法や建築基準法にも注意が必要です。

前面道路との関係

前面道路とは車庫が面して車両が出入りする道路です。この道路の幅(幅員といいます)と収容する車両の幅との関係が、車両制限令という政令に適合しなければなりません。

特殊車両を除き公道を通行できる車両の車幅は最大2.5mで、この幅の車両が通行できる道路は一番厳しい条件で6.5m(車道幅員)ですので、車庫の前面道路がこれ以上であれば基本的に問題ありません。前面道路がこれより狭い場合は、収容する車両が車両制限令に照らして通行できるか確認が必要になります。

この点の確認のため、都道府県や市区町村から道路幅員証明を取得して許可申請書に添付する必要があります(国道の場合は幅員証明不要)。

前面道路が私道の場合は、その土地の所有者等の使用承諾が必要になります。また、その私道が接続する公道が、収容する車両との関係で車両制限令に適合していることが必要です。

▼運送業の車庫について詳しくは・・・

事業用自動車の要件

最低車両数

事業用自動車は、霊柩自動車とそれ以外の「普通自動車と」の二つの種別に分けられ、種別ごと営業所ごとに最低車両数が定められています。

トラックやワゴン車などの「普通車」の場合、営業所ごとに5両以上必要です。トラクタ(牽引車)とトレーラー(被牽引車)は1対のセットで1両とカウントします。

最低車両数適用の例外

以下の場合には、車両は一両から許可を得ることが可能です。

  • 霊柩運送
  • 一般廃棄物運送
  • 一般的に需要が少ないと認められる島しょ(いわゆる離島)の地域

使用権原のあること

自己所有の車両は車検証、購入予定であれば売買契約書等、リース車両はリース契約書の添付により、使用権原の裏付けを行います。許可申請時点では現実に車両が取得済みでなくとも売買契約書やリース契約書の写し添付で申請は可能です。

自動車が輸送する貨物に適切なものであること

事業に用いる自動車の大きさ、構造が輸送する貨物に適切なものであることが必要であるとされています。ただし、許可申請に際して、運ぶ予定の荷物の種類などに関する書類を提出する必要はありません。

使用する自動車は、車検証の用途が「貨物」であることが必要です。貨物自動車といえばトラックがイメージしやすいですが、用途が「貨物」であれば、4ナンバーの商用バンなどでもOKです。但し軽自動車や二輪は不可です(軽自動車、二輪車(原付除く)は「貨物軽自動車運送事業」=いわゆる黒ナンバー運送に該当します)。

まとめ

一般貨物自動車運送業の許可は、他の許認可に比べてもハードルの高い要件が数多くあり、また許可が出るまで長い期間がかかります。
当事務所では、事業者様と伴走型で準備から事業開始までサポートいたします。

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