貨物運送業の運行管理者とは

運行管理者は運管(ウンカン)とも略して呼ばれます。運送業(一般貨物自動車運送事業)の営業所には最低1名、国家資格を持った運行管理者を置かなくてはいけません(霊柩運送など、例外あり)。

運送業許可めに必須の資格者であることはもちろんですが、日常の安全運行を確実に行うためにカナメなるポジションで、とても重要な役割を果たします。

このページでは、運行管理者の法的な位置づけや資格要件、業務の内容等を解説していきます。

運行管理者とは?

運送業における運行管理者については、貨物自動車運送事業法第18条第1項に

「一般貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせるため、国土交通省令で定めるところにより、運行管理者資格者証の交付を受けている者のうちから、運行管理者を選任しなければならない」

と定められています。

運行管理者の職務は「事業用自動車の運行の安全の確保に関する」業務で、運行管理者資格者証を持っている人を選任しないといけない、ということです。

そして、運行管理者の選任の要否、選任が必要な運行管理者の人数は、営業所ごとに事業用自動車の数(配置車両数)によって決められています。

運行管理者の位置づけ

運行管理者は、運送業における運行の安全を確保する重要な役割を担うため、事業者(経営者)は、運行管理者が法律等に定められた業務を行うのに必要な権限を与えなければなりません(貨物自動車運送事業法第22条第2項)。

また、事業者(経営者)は、運行管理者が業務として行う助言を尊重しなければならず、運転者やその他の従業員は運行管理者が業務として行う指示に従わなければなりません(同法第22条第3項)。

上記の通り、運行管理者は会社の中で一定の権限をもって、運転者や従業員に指示を与えたり、経営者に助言をしたりする職責があります。運行管理者が部長や課長以上の管理職でなければならないといったキマリはありませんが、その職責に見合う職位等にあてることが望ましいでしょう。

それでは、運行管理者の資格や業務等について、順を追って詳しく見ていきましょう。

運行管理者の資格要件は?

運行管理者は、運行管理者資格者証の交付を受けている人から選任する必要がありますが、運行管理者資格者証を受けるにはどうしたらよいでしょうか。

  • 運行管理者試験(国家資格)に合格する
  • 事業用自動車の運航の安全に関する業務について一定の実務経験その他の要件を満たす。

のいずれかの方法があります。

運行管理者試験合格で資格を取る

国家試験を受験して資格を得る方法です。試験の概要と受験資格は以下の通りです。

①試験概要

運行管理者試験は、公益財団法人運行管理者試験センターが実施しています。

貨物自動車運送事業法はじめ関係法令4分野と実務関連知識・能力関連分野の計5分野から30問出題されます。試験時間は90分で、合格基準は6割(18問)以上の正答です(出題分野、合格基準は下表の通り)。

従来、年2回試験会場での筆記試験として行われていましたが、令和3年度から、CBT試験(パソコンを使った試験方式)に全面移行しました。従来は、固定した各1日で年2回行われていたものが、CBT移行に伴い、概ね1か月間の試験期間が年2回設定されています。

          分    野出題数
(1)貨物自動車運送事業法関係 8
(2)道路運送車両法関係 4
(3)道路交通法関係 5
(4)労働基準法関係 6
(5)その他運行管理者業務に関し、必要な実務上の知識及び能力  7
          合   計30

合格基準:

①原則として、総得点が満点の60%(30問中18問)以上であること。
ー かつ ー
②上記、(1)~(4)の出題分野ごとに正解が1問以上であり、(5)については正解が2問以上であること。

②受験資格

運行管理者試験を受けるには、事業用自動車の運行管理に関し1年以上の実務経験が必要とされていますが、実務経験がない場合は、「運行管理者講習の基礎講習」を終了することで受験資格が得られます。

実務経験と講習受講による方法

試験合格ではなく、一定の実務経験その他の要件を満たすことにより、運行管理者となる資格を得ることもできます。

一定の実務経験とは、貨物自動車運送事業の事業用自動車の運行管理に関し5年以上の実務経験を有することです。これは基本的には補助者に従事していた経験のことで、勤務していた会社(社長)に証明書を出してもらいます。

そして補助者に従事する5年の間に、運行管理に関する講習を5回以上受講することで要件を満たすことになります。
講習は国土交通大臣の認定する基礎講習と一般講習です。運行管理者資格を持つ人が補助者となる場合以外は、補助者になる際に基礎講習の受講が必要ですので、この基礎講習受講をスタートにして補助者となり、翌年以降に一般講習を1年ごとに4回受けて、補助者経験が5年になれば、運行管理者資格者証の交付申請ができます。

以上のように、運行管理者試験に合格するか、実務経験を有して講習受講の要件を満たす場合に、必要書類を添付して申請すると、運行管理者資格者証が交付されます。

運行管理者の業務

運行管理者が行う、「運行の安全を確保する業務」とは、具体的にどんなものでしょうか。
詳細は、貨物自動車運送事業輸送安全規則という省令の第20条に、23項目(各項および号の合計数)にわたり定められています。
多岐にわたるので、要約すると概ね以下のような業務になります(一部省略)。

  1. 適切な乗務割の作成や、乗務員の健康状態等の把握、休憩・睡眠施設の適切な管理等により、酒気帯び・疾病・過労・睡眠不足等の状態での乗務を防止すること。
  2. 過積載防止や適切な貨物積載方法の指導・監督
  3. 乗務員の、乗務前・中間・乗務後の点呼を実施し、これを記録・保管(1年)すること
  4. 運転者ごとの、乗務の記録を行わせ、これを記録・保管(1年)すること
  5. 運行記録計(タコグラフ)により運行の記録を行い、保管(1年)すること
  6. 一定要件に該当する事故について、必要事項を記録し保管(3年)すること
  7. 中間点呼を要する運行について、運行指示書を作成して運転者に指示を行う
  8. 運転者台帳を作成して必要事項を記載し、所属営業所に備え置くこと
  9. 乗務員に対する運転技術、法令知識等に基づく指導・監督を実施し、その記録を保管こと。また事故惹起・新任・高齢運転者に対し特別指導と適性診断を実施すること。

(詳細は 「貨物自動車運送事業輸送安全規則 第20条」に定められています

運行管理者の選任

運行管理者選任を要する営業所

一般貨物自動車運送事業では、5台以上の事業用自動車を配置する営業所は運行管理者を選任しなければなりません。営業所には5台以上の事業用自動車が必要(最低台数基準)ですから、基本的には営業所には1名以上の運行管理者が必要になります。

ただし、霊柩運送や島しょ部などでは最低5台という自動車数の基準が適用されないので、この場合は、有資格者である運行管理者は選任する必要がありません(無資格の方でOK)。

車両台数による運行管理者の人数

配置車両が29両までは1人の運行管理者が必要で、以降車両30両ごとに1人を追加選任しなければなりません。具体的には下記の算式で算出します(ここでいう配置車両数には、被けん引車(トレーラー)は含めません)。

運行管理者の選任必要数 = 配置車両数 ÷ 30+1 (1未満端数切捨て)

運行管理者の選任届出

運行管理者は、運行管理者資格者証を有する者のうちから選任し、選任後は遅滞なく(一週間以内とされます)国土交通大臣に届け出なければなりません。運行管理者を解任した時も同様です。

運行管理者の講習受講

一般貨物自動車運送事業者は、選任した運行管理者に定期的に講習(国土交通大臣が認定する、基礎講習または一般講習)を受けさせなければなりません。

運行管理者講習の受講時期

対象の運行管理者受講する講習の種類受講時期
新たに選任された運行管理者
(当事業者に初めて選任された者)
基礎講習または一般講習専任届出をした日の属する年度(やむを得ない場合、翌年度
既に選任している運行管理者
(最後に講習を受講した年度の翌年度の末日を経過した者)
基礎講習または一般講習最後に基礎講習または一般講習を受講した日の属する年度の翌々年度以後2年ごと
事故等に係る営業所で選任している運行管理者基礎講習または一般講習

特別講習
事故等があった日の属する年度および翌年度
(やむを得ない場合、翌年度および翌々年度)


事故等があった日から1年以内(やむを得ない場合1年6カ月以内)

基礎講習の受講が必要場合

以下の場合、基礎講習の受講が必要
  1. 新たに運行管理者として選任され、以前に基礎講習を受講していない場合
  2. 運行管理者試験の受験資格について、実務経験に替えて受講する場合
  3. 運行管理者資格者証のない人が運行管理補助者になろうとする場合

補助者とは?

運送事業の場合、事業用自動車は早朝・深夜の発着がある場合や、営業所は定休日がなく稼働する場合なども少なくありませんが、この間のすべての運行に関して運行管理者が直接に管理を行うことは困難な場合が想定されます。
このため、運行管理者の業務を補助させるための者(補助者)を選任することができるとされています。

運行管理者補助者として選任できるのは…

補助者の要件
・運行管理者資格者証を有すする者
・国道交通大臣が認定する講習(基礎講習)を修了した者

のいずれかです。

補助者は運行管理者の業務を補助する者であって代理業務を行う者ではないので、あくまで運行管理者の指導・監督のもとで補助業務を行います。そのため、補助者の地位や権限、選任方法などは運行管理規定で定めておくことが必要です。また、補助者行った業務の責任は運行管理者にあるということになります。

点呼に関する業務については、その一部を補助者が実施することが可能です。ただし、その場合でも当該営業所における点呼の総回数の1/3以上は運行管理者が行わなければなりません。

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まとめ

上記記事中では運行管理者の業務を9項目で説明しましたが、法律上では23項目にわたって業務が決められています。その重要な業務を行うために、社長から必要十分な権限を与えられなければなりませんが、権限があるばかりではなく職責も重い仕事ですね。

5年の実務経験と講習受講で資格取得する方は少なく、多くは試験に合格して資格取得しますが、試験の合格率は3割程度ですので、やさしい試験ではありません。
運送業の会社においては、こういった人材を確保し、これらの人々が日々適切な乗務割や点呼の実施などの広範な業務を遂行して安全運行を支えているというわけです。

運送業の許可取得には、運行管理者の確保の他にも、いろいろとクリアしなければならない要件が数多くありますので、ご不明の点がありましたら、下記にご連絡ください。

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