個人間カーシェアリングとレンタカー業の許可

カーシェアリングには「個人間型カーシェアリング」と、「レンタカー型カーシェアリング」とがあります。

大手コインパーキング事業者等が行っているカーシェアリングは後者の「レンタカー型」で、法律上は一般的なレンタカーと同じ「自家用自動車有償貸渡し」の許可を受けて事業を行っており、クルマのナンバーも「わ」ナンバーとなっています。

では、個人間カーシェアリングは、このような許可等の対象にならないのでしょうか?この点をできるだけわかりやすく解説してみたいと思います。

レンタカー業の許可

レンタカー事業(=自家用自動車有償貸渡し)については、道路運送法で以下のように定められています。

<道路運送法第80条第1項>

自家用自動車は、国土交通大臣の許可を受けなければ、業として有償で貸し渡してはならない(以下、省略)。

このように、自家用自動車を有料で貸し渡すためには国交大臣許可が必要となります(業として、とは継続反復して行う、といった意味です)。

レンタカー業の許可を受けるには、いろいろな要件を満たして許可申請をし、許可書の交付を受ける必要がありますが、その詳細はこちらの関連リンクから該当の解説記事をご参照ください。
レンタカー業を開業するには・・・・許可申請ガイド

では、個人間カーシェアリングには許可や認可、届出などが必要でしょうか?

個人間カーシェアリングの仕組みは・・・

レンタカー型カーシェアリングでなく、個人間カーシェアリングといわれるものは、「自家用自動車有償貸渡し」ではなく、「自家用自動車を個人間で共同使用する契約」を結ぶ、という形式で行われています。

自家用車をシェアリングする個人間では、貸し借りが行われるのではなく、「共同使用」を行う、というリクツですね。

では、サービスを提供している大手企業等はどのような位置づけなのか、というと、「個人間の共同使用」を仲介するマッチングサービス提供者、という立場になっています。従って、これらの事業者は、自家用自動車の有償貸渡しを行うものではないので、レンタカー許可の対象ではないということになります。

この点、個人間カーシェアリングサービスの開始にあたり、大手事業者は、「法令適用事前確認手続き」いわゆる”ノーアクションレター”という制度を使って、事業開始前に国交省の見解を確認しており、その内容が公開されています。

上記照会に対する国交省の回答主旨

  1. 照会した事業者は、自ら自家用自動車の貸渡しを行うものでないので、レンタカー許可の対象でない。
  2. 個人間カーシェアリングに登録しているオーナー(クルマの所有者)がレンタカー許可の対象になるか否かは個々のケースによって判断する

結局のところ、マッチングサービスを受ける「個人」がレンタカー許可の対象か否かは、本件の「回答」の部分だけ読んでも判然としません。

そこで、この確認手続きに対する回答書を「見解および根拠」というところまで読み進めてみる必要があります。

共同使用ってどういうこと?

tokyo unyushikyoku

上記の確認手続きに対する国交省の回答の「見解と根拠」は 個人カーシェア回答内容 の通りです。

自家用自動車の有償貸渡しであれば、レンタカー許可の対象になるのは明らかです。問題は、共同使用だからレンタカー許可の対象でないとすれば、「共同使用」とは何か…だと思います。

国交省回答による「共同使用」とは

  • 同一の自動車を2以上の者が自己のために主体的に使用すること
  • 共同使用する者それぞれが、自動車の使用および管理に関する実施的な権限と責任を有すること

である、としています。

以上の「自家用自動車の共同使用とは」に、個人間カーシェアリングに参加する個人の方間で行われていることが当てはまるなら、これは自家用自動車有償貸渡しではないのでレンタカー許可は不要である、ということになります。

現実には???

私は残念ながら(?)個人間カーシェアリングは利用した経験がありませんので、その共同使用?の仕組みの詳細は承知していません。ただ、マッチングサービス提供者のウェブサイトの内容を見る限りでは、上記の「共同使用とは」にスカッと当てはまるという感じがあまりありませんし、下記の囲み内の記述に照らしても、一点の曇りなく「レンタカー許可対象にあらず」と言い切るのも難しいように思われます。

(以下、前出の国交省回答書の2ー(2)の前段)

「共同使用料」については車両の維持に必要とされる実費を基礎に按分された額として、車両の保有者が定めるものとしているが、その額は、どの時点を基準として算出するのか、また、共同使用者の数は固定されるのか増減するのかによって変動するものと考えられる。
このため、例えば、「共同使用料」についての設定が形骸化したり、日・時間単位だけで使用料の設定を行うような場合には、自家用自動車の共同使用」の適用範囲を超え、自家用自動車有償貸渡業との差はないものと考えられるため、車両の保有者は照会法令の許可を要する場合もあると考える。

レンタカー型カーシェアンリングについてはコチラ

まとめ

世の中は規制緩和の流れにあり、事業者が規制に縛られずに新しいビジネスを開発し、消費者はその利便を享受する、という方向に向かうことで経済にもプラスが大きいということはあると思います。

一方で、シェアリングエコノミーの隆盛は消費拡大の抑制要因にもなります。さらにまた反面、消費抑制は環境保護にプラスの効果ももたらす可能性もあります。

モノゴトには裏表、2面性があり、単純な評価はできないものですが、昔のような規制強化で新しいビジネス、サービスの芽が摘まれるようなことがないようにとは願いたいと思いますし、また法令にキチンとしたがって許認可を得てビジネスをする事業者様が不利益を被らないようにすることも重要な事だと思います。

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