運送業のドライバーの選任手順

当サイトでも解説していますが、運行管理者や整備管理者は有資格者または一定の実務経験を持つ人を選任し、運輸支局に届出書を提出しなければなりません。

これに比べて、ドライバー(運転者)は必要な資格としては、乗車するトラックに応じた運転免許のみで、社内で選任すればよく、役所に届出書を出す必要もありません。しかし、最終的に運行の安全を現場で実現するのはドライバーですので、初任教育を含めて望ましいステップを踏んで選任し、実務につかせることがとても重要です。

このページをよめば、ドライバーを採用し、選任して乗車してもらうまでの望ましいステップが良くわかります。

ドライバーの採用と選任

ドライバーを採用、選任したら、最終的には「運転者台帳」を作成しなければいけません。運転者台帳の法定記載項目はたくさんありますが、その一つに「雇入れの年月日および運転者に選任された年月日」という項目があります。

この項目の、雇入れと運転者選任が同じ年月日になっている運送会社が少なくありません。これ自体は違法、違反ではないですが、後述する「(運転適性)初任診断」と「初任教育」との関係に注意が必要です。

すなわち、本来はドライバーを採用したら、まずは雇入時健康診断を実施し、その後初任診断受診と運転記録の把握 → 診断結果と運転記録から適性を判断して選任 → 初任教育の実施 …とながれて乗務開始する、というステップが望まれます。

上記から考えると、雇入れ年月日と運転者として選任する年月日の間には、一定の期間があるはず(あるべき)、というのが本来の姿ということになります。

それでは、ドライバー選任の流れをもう少し詳しく見ていきましょう。

健康診断と適性診断(初任診断)

まず、雇入時の健康診断ですが、常時雇用する労働者を雇い入れるときに会社に義務付けられているもの(労働者安全衛生規則43条)で、運送業のドライバーもこれに基づいて行うことが必要です(ドライバーについて特別な健康診断が必要ということではありませんので、ここでは詳細は省略します)。

運転適性診断は、”特定(事故惹起者)診断” ”適齢(65歳以上)診断” ”初任診断” の3種類がありますが、新たに採用したドライバーに対しては、もちろん初任診断を受診させることになります。

初任診断について

受診が必要な診断は以下の通りです。

診断の種類初任運転者のための適性診断として国交大臣が認定したもの(※)
受診が必要な運転者運転者として常時選任するため新たに雇い入れたもので、当該事業者において
はじめて乗務開始する前3年間に初任診断を受診したことがない者
受診の時期その運送会社で乗務開始する前
(やむを得ない事情がある場合は乗務開始後1か月以内)

(※)初任運転者の受診すべき適性診断は、基本的には上記の初任診断ですが、該当する運転者が事故惹起者または65歳以上であって、それぞれ該当する診断を受けた場合は、初任診断を重複して受診する必要はありません。

診断の実施機関は、NASVA(自動車事故対策機構)が代表的なものですが、他にも民間の期間が多数大臣の認定を受けて実施していますので、「運転適性診断」「初任診断」などで検索するとネットで容易に見つけることができます。

受診の時期について、乗務開始後でもよいとする「やむを得ない事情」とは行政から例示等はされていませんが、安易に後回しにせず、できるだけ乗務前に受診させ、かつ診断結果を踏まえた初任教育をおこなってから乗務開始させるようにしましょう。

受診結果は、初任教育に活用するとともに運転者台帳に「適性診断」の記録欄に記録し、診断書はファイルを作成するなどして保管しておきます。

初任運転者教育

運転者に対する教育は、国土交通省が出している告示等では「事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督」といいます。ここでは、「指導及び監督」を教育、と表現して説明していきます。

運転者教育は、全ドライバーに対して毎年継続的に行う「一般的教育」と、特定のドライバーに行う「特別教育」があり、特別教育は上記の適性診断と同様に、”事故惹起者”、”高齢運転者”、”初任運転者”の3種類があります。

初任教育の内容

初任教育は、座学(一部実車使用)および運転実技で、下記の内容、時間数(以上)行います。

内      容時 間
一般的教育(全ドライバーに毎年行うもの)12項目に基づき運転者が
遵守すべき事項、事業用自動車の安全確保に必要な運転に関する事項(※)
(事業用自動車の車高、視野、死角、内輪差等や貨物積載方法等について
は実際に車両を用いて行う)
15時間以上実施すること
安全運転の実技(実際に事業用自動車を運転させ、道路・交通の状況に
応じた安全な運転方法を添乗等により指導する
20時間以上実施すること

(※)一般的教育の12項目は、別ページ「運送業のコンプライアンス=ドライバー教育」参照。

初任教育を実施したら、その年月日と指導の具体的内容を運手者台帳に記入しておきます(具体的内容は別紙として運手者台帳に添付しておくことでもOKです)。

乗務のスタート

以上のように、健康診断・適性診断を受診させ、診断に基づいた初任教育を行ったら、運転者台帳に必要事項を記入て整備できたら乗務開始可能です(他に、社会保険に加入する…等も必要)。

まとめ

以上のように、ドライバー自身が持っていなければいけない資格等は運転免許くらいですが、事業用自動車のドライバーとして採用、選任するには適性の見極めと安全運行に向けた教育(指導・監督)が必要ですので、それなりの手順を踏んで対応することが大切です。

これらを怠ると、数年おきに回ってくる適正化実施機関による巡回指導の評価や、その結果として監査の実施にもつながる結果となりますので、的確な実施に努めましょう。手間と時間はかかりますが、無事故や事故減少につながれば会社にとってもドライバーさんにとっても、最も望ましい結果となるでしょう。

当事務所では、ドライバー選任手続きを含め、運送会社のコンプライアンス向上の支援も行っておりますので、外部サポートをご検討の運送事業者様はお気軽にご連絡、ご相談下さい。

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