巡回指導(トラック運送業)への対応

当事務所は運送業(一般貨物自動車運送事業)支援専門の行政書士事務所です。許可をとり事業開始から数か月、またその後も定期的にやってくる巡回指導の結果で半年後の再巡回や、場合によっては行政による監査に直結することも。
通知が来るので事前に準備が可能な巡回指導にしっかり対応することで法令遵守に踏み出すこと、Gマーク取得へのスタートにすることも可能です。
巡回指導の通知を受け、準備に不安がありましたら一度当事務所へご連絡ください。

巡回指導とは?

トラック運送業(一般貨物自動車運送事業)を営んでいて避けられないものとして「巡回指導」というものがあります。このページでは、巡回指導とは何か?監査と何が違うのか?対応にはどうしたらよいか?…などの疑問に対し基本的な回答を説明してまいります。

「巡回指導」の事前通知を受けた事業者様からよくある依頼に「監査が来るので、準備や対応について手を貸してほしい」というものがありますが、「巡回指導」と「監査」は別のものです。このように混同しやすい、「巡回指導」と「監査」の違いを整理してみましょう。

巡回指導監査
実施する機関適正化実施機関運輸支局(監査担当)
実施時期・間隔ある程度定期的不定期(主に必要ある場合)
事前通知通知あり(2~3週前など)原則非通知
行政処分の実施直接に行政処分は行われない
(行政処分の端緒にはなり得る)
行政処分に直結する可能性あり

適正化実施機関

巡回指導を実施する「適正化実施機関」とは、正式には「地方貨物自動車運送適正化実施機関」といい、実際は各都道府県トラック協会が地方運輸局長の指定を受けて「適正化事業」を行っている機関です。一般貨物自動車運送業の許可を受けると、最初に適正化実施機関と接する機会としては「新規許可事業者指導講習会」がありますが、その次に接する機会は「初回巡回指導」となるかと思います。

巡回指導の位置づけ

上記の通り、適正化実施機関による巡回指導は、その名の通り、貨物自動車運送事業の適正化を推進する目的で行われる”指導”の機会という位置づけになります。

トラック協会は運送事業者による業界団体ですので民間団体です。したがって適正化実施機関も民間団体ですので、行政処分を行う権限は持っておらず、直接に行政処分は行われないということになります(ただし、監査の端緒となり、監査を通して行政処分につながることはあり得る)。

対して、運輸支局による「監査」は、行政処分権限を背景にして行われるので、結果により行政処分に直結する可能性があります。

このように、巡回指導は監査とは大きくその位置づけを異にするもので、指導の結果を受けて業務の改善を図り、改善結果報告を行うことで適正な事業運営に一歩近づくことができる、と理解すれば前向きにとらえることもできるものです。

巡回指導の実施時期・間隔

まず、新規に一般(または特定)貨物自動車運送事業の許可を受けると、運輸開始届の提出から3か月後(原則)に「初回巡回指導」が行われます。

その後の間隔はD,E評価以外は非公表なので一部推測ですが、総合評価ランクによって概ね以下のようになると思われます(A~Eの評価項目と判定方法は後の項目で解説しています)。

総合評価次回巡回指導時期
A評価概ね3~4年後
B,C評価2~3年後
D,E評価半年後

総合D,E評価の場合、令和4年度までは1年後再巡回とされていてものが、令和5年度(4月)から半年後の再巡回指導と改められました。改善が必要な事業者を重点的な対象にして指導を強化する、という意図です。

巡回指導の詳細

巡回指導では、35~40種程度の書類を中心に、7区分38項目にわたって、運行管理、業務管理の適否がチェックされ、一定の方式でA~Eの5段階の総合評価が付されます。実施時間は概ね2時間程度、通常は適正化実施機関から2名の指導員が来社し行われます。

チェック対象の書類

チェックに用いる書類は事前に準備しておくよう指示されますが、下表のように運行管理に関するものすべて、労務・人事管理に関する主要な書類のほとんどと経理関係となっており、かなり多くの書類が対象となります。

巡回指導の指導項目

巡回指導7区分38項目

総合評価の判定方式

総合評価は上記38項目について適否を判断し、「適」の割合で判定されます。

「適」の割合総合評価
90%以上 (適35以上)A(大変良い)
80~90%未満(適31以上)B(良い)  
70~80%未満(適27以上)C(普通)  
60~70%未満(適23以上)D(悪い)  
60%未満 (適22以下)E(大変悪い)

※重点項目となっている9項目中に「否」が1つでもある場合、上表で決定された総合評価を1ランク引き下げる。(「否」が2つ以上でも引き下げは1段階のみ)

D,E評価を受けると

総合評価でDまたはEランク評価となった場合、半年以内に再巡回指導が行われることになります。そして、3回連続でD,E評価となった場合は適正化実施機関から運輸支局にその旨が報告され、監査・処分の対象となります。

総合評価がD,Eの場合について詳しくは・・・こちらをご参照ください(神奈川県トラック協会HP)

また、総合評価が「E」の事業者(事業所)はトラックの増車が「認可事項」となります(通常の場合増車は「届出事項」)。したがってこの場合増車を行うのに数か月を要する、といった状況になってしまいます。

さらに、事業規模の拡大となる事業計画認可申請(例:車庫の増設 等)の場合、”申請前3か月以内に巡回指導でE評価を受けていないこと”が条件になるので、事業展開に制約がかかってしまいます。

改善指示があったら

巡回指導において、要改善事項がある場合、「貨物自動車運送事業者実態調査書」の該当項目の「改善の必要」に〇を付されます。この項目については業務の改善を図り、その事実が確認できる資料コピーを添付して2か月以内に改善報告書を提出します。内容によって2か月以内に改善が完了しないケースもありますが、その場合も「改善済・未」の未に〇をつけて経過報告を行いましょう。

改善指示があるにもかかわらず改善報告を実施しない場合、適正化実施機関から運輸支局に報告が行われます。評価D,Eの事業者が報告を提出しない場合は監査・処分の対象となります。

今回は巡回指導について詳しく解説してきましたが、前提となるのは法定帳票の的確な作成、保管など、日常の業務管理、運行管理の適正な実施です。運送業のコンプライアンス向上については下記リンクをご参照ください。

まとめ

以上の通り、巡回指導は監査とは違い、業務改善のチャンスととらえることもできます。日ごろから法定帳票の作成、保管等を適正に行うように努めていれば、さらに改善の指示があったとしてもこれをしっかり受け止めて改善を行えば、より適正な事業運営に近づきます。逆に言えば、これによって監査・処分から距離をとっていくことにつながる、といえます。

巡回指導の通知が来たら、あるいはいつ巡回指導が来てもよいように・・・準備に支援が必要だとお考えになったら当事務所にご相談ください。

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