運送業を営むのに許可が必要、ということはご存知の方も多いでしょう。このことにご関心をお持ちの方は、調べてみて運送業許可を取るのはかなりハードルが高い、ということもすでにご承知かもしれません。
取るのが難しい、とわかれば、許可を取らなくてもできるケースがあるのか、あるならどんなときなの?という疑問も自然と浮かんできますよね。
このページでは、運送業(貨物)の許可についての規程(法律)をサラッと確認した上で、事例を挙げて許可が不要なケースを確認してみましょう。
法律上のキマリ(許可が必要な場合)
トラックをはじめ、自動車による貨物運送事業は、「貨物自動車運送事業法」という法律で規定されています。そのうち、普通に運送業という言葉で指すのは「一般貨物自動車運送事業」というもので、その内容を岐阜運輸支局のWEBサイトから引用してみると
一般貨物自動車運送事業とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものを言います(貨物自動車運送事業法第2条第1項)。
つまり、”トラックを使用”して”他人から運送の依頼”を受け、”荷物を運送”し、”運賃を受ける”場合のことを指し、一般貨物自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣または地方運輸局長の許可が必要です。
(出展 https://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/gifu/yusou/kamotsu/ippankamotsu.htm)
前段は読みにくいですが、広範場だいたいわかりますね。要素としては4つで、
- トラックを使用
- 他人からの運送の依頼
- 荷物を運送
- 運賃を受ける
場合のことを指す、と言っています。
ここでは「トラックを使用して」とありますが、乗用車クラスの大きさのバンなど、貨物自動車を用いるもの全般を含みます(貨物運送を一般に「トラック運送」というため、このような表現になっています)。ただし、軽貨物自動車は含みません。
貨物運送業の許可が不要な場合
上の囲みの中の4つの条件を逆に読めば、運送業(貨物)の許可が不要なのはどんな場合か、判ると思います。
トラックを使用しない(トラックを使用、にあたらない)場合
ここでいうトラックには上記の通り貨物自動車全般を含みますが、軽自動車(貨物)は別の事業になるので含みません。乗用車は貨物運送には使用できません。
道路を走る車両を用いる場合で運送業許可が不要なのは…
- 軽自動車、125㏄超のバイクを用いる場合
- 原付バイク(125㏄以下の二輪車)を用いる場合
- 自転車など軽車両を用いる場合
です。
①は許可は不要ですが、届出が必要な事業=「貨物軽自動車運送事業」に該当します。法律に基づいた届出を行ったうえで、黒ナンバー(125cc超のバイクは緑)を付けて行う必要があります。
②は自動車に該当せず「原動機付自転車」なので、有償運送をおこなっても運送業に該当せず、また他の法律の規制も受けないので、届出等も必要なく自由に行うことができます。
③の自転車の場合も同様です。
足元でとても増えているウーバーイーツや出前館などのフードデリバリーは、自転車または原付バイクがほとんどだと思いますが、125㏄超の二輪車を使うのであれば、貨物軽自動車運送事業の届出をし、緑ナンバーを付けなければなりません。
自社の荷物を運ぶ(他人からの運送の依頼、にあたらない)場合
「他人から運送の依頼を受け」が許可を要する場合のひとつですから、自社の荷物を自社で運ぶ場合は許可が不要です(個人の自分の荷物を運ぶ場合も同様)。
これは、事業(業務)として継続的に行っても、運送業には該当しません。例として…
- メーカーが自社製造商品を自社のトラックで販売先へ配送する場合
- クリーニング工場のクルマが取次店をまわって自社で扱う洗濯物を集配する場合
- 建設業者が自社の倉庫から建設資材を工事現場まで自社のトラックで運ぶ場合
- 卸問屋がメーカーから仕入れて自社の所有物になった商品を販売先に配送する場合
注意が必要なのは、子会社などが運賃を受けて運ぶ場合です。この場合の子会社は「自社」には含みません。グループ会社等であっても経済取引の中で荷物を運ぶ場合は、運送業に該当します。
人を運ぶ(荷物を運送し、にあたらない)場合
ここは言うまでもなく、貨物運送業には当たりませんが、人を有償運送する場合には「旅客運送事業」の許可が必要になります。
無償で運ぶ(運賃を受ける、にあたらない))場合
運送業は運送を事業として行う、ことですから基本的に有償運送です。従って、他人からの運送依頼を受けて荷物を運ぶ、としても、これを無償で行う限りは運送業には該当せず、運送業許可は必要ありません。
他社(他人)の依頼で荷物を運送することを本当に無償で継続的に行うのであれば、確かに許可は不要ですが、なんらかのボランティアなどでない限り、普通そんなことはできないと思います。
このような場合には、「名目にかかわらず、実態として運賃が収受されている」場合には、有償運送を行っている、すなわち運送事業に該当するので許可が必要、ということになります。名目として運賃を受けなければよい、などと安易な判断は禁物です。
参考ページ : 仕事で走るトラック 白ナンバーと緑ナンバー
まとめ
以上のように、荷物を運ぶこと自体を事業(仕事)として行う場合、自転車・原付バイク以外の車両を使って行う場合には、ほぼ運送業(貨物自動車運送事業)の許可か、軽自動車・二輪の場合の貨物軽自動車運送事業の届出が必要になります。
貨物の有償運送を許可を許可を取らずに事業として行うと、いわゆる「白トラ行為」として厳しく罰せられますので、注意しましょう。
当事務所では、一般貨物自動車運送事業の許可、変更認可申請・届出、貨物軽自動車運送事業の新規届出など、運送事業のビジネスの各種申請手続きを代行しております。
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